僕は犬

犬は言葉を話しません。

けど何も言わないからこそ、いつも何かを私たちにじっと語りかけているような気がするのです。

今日は休みなので、朝の散歩は少し長めにしようね。

 

 

僕は犬

 

僕は犬。

ここの家族に迎えられて8年になる。

 

ここが僕のお気に入りの場所。

夏はタイルが冷たくて気持ちいい。

ここで大好きな家族が帰ってくるのをじっと待つ。

僕には時間が分からない。

けど、西日がリビングに差し込み始めたらもうすぐママが帰ってくる。

じっと聞き耳を立てる。

 

 

ママは仕事と子育てにいつも忙しそうだ。

みんなが寝静まったあと、台所にしゃがみ込んでカステラを口に詰め込みながら泣いていることがあった。

 

ねぇ、そんなにしんどいならもっと力を抜きなよ。

ほら僕の背中に顔を埋ずめてごらん?

安心するよ。

 

ねぇ、パパ。

どうしていつも手に持った四角い箱を見ながら、眉をひそめてるの?

そんなに気が滅入るなら、その四角い箱をベランダから投げ捨てちゃいなよ。

その手でそっと僕の頭を撫でて。

パパの手は大きくて、僕の頭はすっぽり覆われるくらい。

けど僕はとっても満ち足りた気分になるんだ。

 

僕は犬。

僕は15年くらいしか生きられない。

だから、できるだけ毎日パパやママと一緒にいたいんだ。

 

流行りの服や靴。

新しい車。

広い家。

 

僕はそんなのちっともいらないから一緒にいよう。

僕は犬。

夏は暑くて嫌いだけど、朝一番の散歩は好きなんだ。

今日はどんなことがあるんだろう、ってワクワクする。

ほら、窓の外をみてごらんよ。

今日も新しい1日が始まるよ。

もうすくママが朝の散歩に連れて行ってくれる。

そろそろ玄関で待っておかなくちゃ。